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僕とタイツと森の学園
5月。ひと頃の朝の寒さも落ち着いた朝、僕は憂鬱な気持ちで快速電車を待っていた。
(ねぇ、あれみて? クスクス… かわいい)
その声はおそらく僕に対してのものだろう
なぜなら僕は他の学校の生徒と違った格好をしているから。
僕が通う「ワリトーワ学園」は60年の歴史がある私立の小中高一貫校だ。
都会から快速電車で1時間、そこからバスで30分。森林に囲まれた国立公園の近くにある。
そこまで聴くと由緒正しい伝統校のイメージがあるけど、もうひとつ
僕たち在校生には、蔑称ともいえるあだ名がついていることでも有名だった。
「タイツの森学園」
蔑称の由来は校則にある
制服の規定で男女問わずタイツを着用しなくてはいけないのだ
創設者であるワリトーワ女史の当時の強い意向を今も守っているらしい
昭和の時代なら納得できたかもしれないけれど、21世紀を生きる僕たちには恥ずかしさしか抱かない。
特に春先は、学年の入れ替わりでタイツ姿に見慣れない他校の生徒も多く乗り合わせくるから最悪だった。
(タイツ、どうにかならないかなぁ)
その頃はそんなことばかり考えていた。
ただ中等部の2年だった僕には、伝統に逆らう術も反骨心も持ち合わせていなかった。
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