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嬉しいのに、こんなにしてもらっちゃっていいの
かなとか、ぐるぐると考えてしまう。
その時、ふいに伸びてきた彼の大きな手が
ワシャワシャと私の髪を撫でくり回した。
「何もそんな考え込まなくていいんだよ。
ただ喜んでくれればそれでいい。」
"俺はお前の喜ぶ顔が見たいだけなんだから"
───最後に囁くように呟いた彼の一言が私の
頑なな心をそっと溶かしていく。
乱れた髪はそのままに、チラリと彼を上目遣いで
見てみた。
するとそこには、まるで当然のように大好きな笑顔がある。
何だか少しだけくすぐったくなった。
今はまだ、私は私のことを好きではなくて、本当の
意味では大切には出来ないかもしれない。
だけど彼が大切にしてくれる私なら、私は私を
大切にしてあげられるんじゃないかなって
そんな風に思う。
「ありがとう。」
「ん。」
素直に感謝の気持ちを伝えれば、彼は満足そうに
また笑った。
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