Iam

2/5
前へ
/5ページ
次へ
「もう雨が降ってきたのか。」 駅から歩いて10分もかからないほどのマンション。 通いなれたその部屋の住人である彼は、インター ホンを鳴らすとすぐに部屋に通してくれる。 折り畳み傘を玄関に置いて、部屋に上がった私の手にごく自然に触れた。 「冷えてるな。」 「冷え性だから。」 「だったらそんな薄着で来るなよ。」 言いながら、後ろから体をすっぽりと包み込んで いく温かい腕。 「雨で濡れると余計冷えるだろ。」 「大丈夫だよ。小雨だったし。」 「駄目だ。風邪ひく。」 こういう時、彼をまるでお父さんみたいだなって 思ってしまう。 心配性というか、過保護というか。 むしろお父さんよりもお父さんらしいんじゃない かとすら思える時があるくらい。 それはちょっと恥ずかしいけど、嬉しいことで。 でも私はどんな顔をしたらいいのか、何て言ったら いいのか分からなくなる。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加