36人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
file000 目覚め
「やあ、調子はどうだい?」
当てもなく虚空に放したその言葉はすぐさま自分の中にすんなりと戻ってくる。
誰に向けてでもなく振り絞った声は掠れている。喉の奥がヒリヒリと痛んで、なにか詰まっているのかと思うほどに息がしづらい。
秋の空は穏やかに晴れていて何の憂いも感じられないのに、まるで壊れた世界に自分一人だけが残ってしまったような気分だ。
「おやすみ」
また当てもなく言い放って、湯野朱士は目を伏せた。
![354c5f4e-1c26-47ca-98fe-1374a96f194e](https://img.estar.jp/public/user_upload/354c5f4e-1c26-47ca-98fe-1374a96f194e.jpg?width=800&format=jpg)
最初のコメントを投稿しよう!