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バキアと呼ばれる化け物が世に現れたのは昨年のこと。
入学する高校が決まっていた二月半ばにアマテラス二軍への入隊許可をいただいて、俺は今ここにいる。
バキアを相手に戦闘をするのは一軍。二軍は住民の避難誘導が主な仕事となる。
湯野は二軍へ入隊して三ヶ月が経つが、バキアの知識が少なすぎると指摘され、広報課に情報を送って貰うよう促されていたのだ。
タブレットの画面をオフにして朝食のフレンチトーストに向き直る。
そのまま視線をあげると、上司である十班の班長、佐々木と目が合った。
「ったく、お前ほどバキアに無知な班員は初めてだぞ。よく志願したな」
佐々木はベース型の輪郭に小さな目をしばたかせ、フレンチトーストの最後の一切れを惜しげもなく口に詰め込んでいる。
皺が深く刻まれた厳格な顔つきで、顎の髭をひと撫でしてからスープを一気に飲み干していく。
「アマテラスもナメられたもんだ」
雑に口元を袖でぬぐってから「お前みたいのがいるから最弱班のレッテルを貼られるんだ」と吐き捨てるように言うと、空の食器をそのままに立ち去っていった。
二軍は一班から十班まであり、数字が小さくなるほど精鋭。だから最弱班というのはレッテルではなく事実だろうと心の中で反論する。
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