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タキシードの男は今度は吊り上げた眉を下ろし、笑みを浮かべて言葉を続ける。
「まあ、国の代表者が追放したいと思っている人間を最下位になるまで執拗に選び続ければ、他の人にはしばらく順番は回ってこないでしょうがね・・。もちろん・・その人間がただの役立たずなら、そんな考えも杞憂になってしまうかもしれませんが・・・」
タキシードの男の笑みには悪意が込められているように感じた。
暗に嫌いな人間を執拗に選び続けろと言いたげな笑み。
口には出さないが、『わかるだろ?』と付け加えられたような無言の圧力、そんなものがその笑みにはあった。
慧祐がその言葉をどう受け取るかはわからない。
しかし、彼は国王として闘うべき人間を選び出さなくてはいけないのだ。
「ああ・・言い忘れましたが・・そんなことをする国の代表者はいないとは思いますが念のため・・もしも、参加者の選定が制限時間内に終えることができず、結果的に参加者を選定できなかった場合・・闘いに参加する意思がないと見なし、その場でその国は降伏したとします。降伏は滅亡と同義。その国の全員を処分します。国の代表者は多くの国民を守るために、最小の犠牲で済む方法を常に考えながら、この闘いに勝つように思案してください。」
望む者がいるわけでもないこの闘いは、今幕を開けようとしていた。
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