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2.輝と慧祐
洋館に訪れることになるおよそ1ヵ月前の話に戻る・・
「お前が新しく異動してきた総務部長さんの息子か・・」
2年D組に穂室慧祐が転入してきた初日、慧祐の机のそばに佐川輝が近づく。
その少し後ろに数人の男子生徒も続いていた。
その雰囲気はとても友好的とは言えない口調と声質。
むしろ今にも殴りかかろうとしそうな顔つき。
今日初めて会う同級生に向けるようなものでもない第一声。
すべてが慧祐を歓迎するつもりがないことを示唆していた。
「先に言っておくが・・俺は別にお前自身に恨みや妬みなんかがあるわけじゃない。だが・・俺はお前たち家族がこの街に来たことを許さない・・。」
慧祐を見つめる輝の目には憎悪の炎が渦巻いている。
別に二人がこれまでどこかで出会ったことがあるわけではない。
なのに、輝の憎悪はまるで積年の恨みから来るもののように深くも感じる。
慧祐は輝から向けられる憎悪の視線に動じるでもなく、しばらく輝の顔を見つめると、何事もなかったように次の授業の準備を始めた。
「おい・・シカトかよ!?」
輝が慧祐の机の上に置かれた物を払い落とす。
それでも慧祐は動じず、落ちた物を拾い集めた。
こうやって輝が慧祐に対するいじめは始まる。
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