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1.立国
「おい!慧祐!遅いんだよ!早く来い!」
林間学校初日だというのに、佐川輝から穂室慧祐へのいじめは相変わらずだった。
輝の取り巻き達も一緒になって自分たちの鞄を慧祐に押し付けている。
両腕にいくつもの鞄を下げながら、慧祐はバスまでの歩みを無言で進める。
クラスの他の者たちはただよくある見て見ぬふりを続ける者がほとんどだった。消極的協力者と言ったところだろうか・・・。
慧祐が転校してきて1ヵ月になるが、いじめの原因は慧祐本人は理解していた。しかし、自分自身で解決することもできず・・かと言って抗うこともできず・・このままの日々がいつか終わることだけを願う毎日だった。
荷物はすべてバスに積み込まれ、教師と生徒も全員が乗り込んだ。
2年D組を乗せたバスが他のバスに続いて発車したのだった。
1時間ほど走ったところで、生徒の1人が気づく。
「あれ?他のクラスのバスってどこ?うちらのバスしかいなくない?」
気づけば、2年D組のバスだけが山の中で続いている道路を走っている。
高速道路では数台連なって走っていることが確認できていた。
どこではぐれるようなことになったのだろうか・・。
1台になったバスは山の深淵へと走り続けた。
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