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「今週の土曜日は1時にうちに来てね」
下駄箱を抜けてロータリーに出た瞬間、もう待ちきれないという様子で麻莉菜が口を開いた。
麻莉菜の大きな目が周囲を見回して、それに友人たちが一斉に応じる。
「楽しみにしてるね」
「私も!」
「もうプレゼント買ったから」
今週末に予定されている麻莉菜の12才を祝う誕生日会。誘っていない子が可哀想だからという理由から母親に、教室でこの話題を控えるように言われた麻莉菜は朝からずっとこの話をしたくて堪らないようだった。
「お菓子もたくさん用意するから、楽しみにしててね。じゃあ十和、沙希ちゃん、ばいばい」
そう言って麻莉菜は自信に満ちた笑顔を向けて、十和と沙希に手を振った。他のみんながそれに続く。
「ばいばい」
「ばいばい、明日ね」
麻莉菜の誕生会の話題で盛り上がったまま、集団は十和とは逆方向へ遠ざかっていく。
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