悪夢が来りて雨の中

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   健一は美沙の面影の全てを流したかった、タダひたすら土砂降りの雨の中を歩き続けた。    静まり返った住宅街の道路を、シャッターの閉まった淋しい商店街の道を、ビルが並ぶ大通りの街灯燻る歩道を、行き交う車の跳ね上がる水飛沫を浴びながら、健一は、夢遊病者の様にふらつき彷徨った。    傘を差していても、健一の髪の毛はビショ濡れて、ジャージもビショ濡れで、靴は水が溢れ重かった。  頭の中では、知らない夜の雨の街に行ってみようと、新しい街を、さ迷ってみようと思っていても、結局健一は歩きなれた道を何度も往復していた。    どのくらいの時間、薄暗い道を彷徨っていたのか、土砂降りの雨は、何時しか小降りの雨に生っていた。  疲れ果てた健一は、気が付けばアパートの前に立ち、3階建ての角部屋の美沙と自分が同居している部屋を見詰めていた。
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