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健一は、6畳に在る押入れを開けた。
押入れの上段にハンガー棒が通され、美沙のジャージが何種類か吊るされていた。作務衣が一着吊るされて在ったが、吊るされている洋服はそれだけだった。あとは美沙が今日着て行った外出着だけだと思った。
下段にそんなに高いとは思えない布団が一組置かれていた。横に下着類や靴下等が這入っていると思われる、小さな箪笥が2個並んでいた。
健一が思っている以上に質素だった。美沙は自分のものを殆ど買っていない。
美沙は健一の為に、高級なスーツを買ってくれた。
家庭的な女性に生ろうと必死に努力をしていた美沙に、健一は何一つ買っていない。
上段に50~60冊ぐらいの数の本が並んでいた。殆どが小説本だった、意外と少ないと思ったが、全部新品の本だった、美沙は毎月10冊前後の本を買っている。
健一は押入れの襖を静かに閉めた。
健一は、部屋の角に置かれている小さな棚を観た、部屋に入った事のない健一には初めて観る棚だった。
健一の眼は棚の上に載る、写真楯に這入った美沙の家族写真を見詰めた。
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