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バスルームは、美沙の香しい匂いが漂っていた。
美沙の使う高級石鹼の花の香りとシャワーから流れ出る温水の雨は、冷たい悪夢の空間から暖かい幸せへの空間へと導く、恵みの雨だと感じながら、健一は浴びている。
美沙は大事な人が父親だと言う事も、連絡を取った所が母さんという事も、何故、言わなかったのか。
美沙らしいサプライズだけではない、美沙は健一の心も行動も手に取るように把握していた、そして、このサプライズで二人に絆が生まれる事も計算している。
健一は今、美沙の香りが漂う心地好いシャワーを体中に浴びながら、美沙の心を知って行く満足感に浸っている。
心も体も癒される安堵の空間で、健一に不図、空腹感が襲った。
健一は朝から殆ど何も食べていない、不意に頭に食べる事の楽しみが蘇った。
リビングには、美沙と一緒に食べる筈だった、御弁当が在る。
えっ ? 若しかすると僕は ? まだ ?
美沙の素晴らしさを見落としている ?
健一はシャワーを止めて、慌ててバスルームを出た。
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