第一章 あなたのオモチャではありません。

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貴重な部品を拾いあげてホッとした私に竜飛さんは大っきくてごつめの手のひらで前髪をあげて形の良いおでこを晒すと甘やかなまなざしで私を見た。 「何してるのですか?」 「さっきの続き。おでこでもいいかなと思って」 「なっ、失くしたの誰ですかっ。  ちょっとは反省して下さいっ!」 その後、竜飛さんの両頬をつねりあげて グリグリしたのは言うまでもない。 *** ここは都内の一角に建つ老舗の工房スタジオSPOTLIGHT【スポットライト】だ。 取引先は個人の大豪邸から分譲マンションや賃貸アパートの修繕、そして時計や宝飾品、服、靴など身の回りの物の修理まで幅広くやっている。つまりは大小のモノのあらゆるリペア《修理》を専門とする会社だ。 現在、常駐している職人は五人いて、会長のおじいちゃんと社長のお父さん、その孫の私、田中さんと二階堂さん、そしてついひと月前に入ってきたアルバイトの竜飛さん。人手が足りない時には臨時の職人を募集することもある。そして私、森川理乃(もりかわりの)はここの事務員兼職人でもある。
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