1INPUT→たった一人で新居へ

1/7
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ

1INPUT→たった一人で新居へ

今日は引っ越しの日。 実家暮らしも昨晩で最後。 長年続けてきたバイト先の人たちにも、結婚をするので寿退社だと、送別会も開いてもらって、お祝いまでもらった。 貯蓄もあまりないし、お金の問題もあり、結婚式は挙げず、まずは二人で探した新居での生活費にお金は当てる事にした。 引っ越しは自分たちでなるべく済まそうだなんて、彼が言うから、私は荷物をまとめ待っていると、携帯に電話が入る。 「ごめんね、トシコさん、車やっぱり借りれなくなっちゃって、今日の引っ越しはキャンセルね」 キャンセル?レンタカーなのに、借りれなくなる事なんてあるの?…予約とかしなかったのか?… 「えっ?いや、その、悟の車でもいいんだよ?今日鍵渡しだから時間までには絶対行かないと」 こないだもギリギリで賃貸会社に、鍵渡しの日を悟は勝手にキャンセルしたというのに、今回はさすがにそれは無い。 「というか、実はね急遽仕事も入っちゃって、ごめんね、どうしても今日がいいなら、悪いんだけどトシコさんだけで行って貰ってもいいよ」 私だけでって、それは…。 「荷物準備しちゃったのに、こんなにも持って行けないよ、どうしよう…」 実家の玄関には私の荷物で山積み。 こんなに準備万端にしたのに。 私は車は乗れないし、親も弟も仕事で車は出して貰えないし。 「鍵だけ貰って帰れば?」 簡単に言わないでよ、電車で片道1時間以上もかかるのに。 「…もういいよ、自分でなんとかするから」 そう、結局いつも私はこうやって自分一人でなんとかすると言ってしまうのだ。 「ごめんね、トシコさん。俺もそのうち引っ越しするから、じゃあヨロシク」 そのうち引っ越しって…。 なんて、他人事のような言葉なの…。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!