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翌日も悟からの連絡は一切なく、私は電車で早朝実家へと荷物を取りに戻る。
私の母は、心配そうに声を掛けてくれる。
「また行くの?」
この虚しさを、認めたくなくて、
「そうだよ、全然電車で運べるから」
そう言って、また荷物を持って、駅まで歩いて電車で運ぶ。
午後にも再び実家へ戻り、荷物を持ってまた電車で新居へと運ぶのを繰り返した。
最低限の物だけを運び入れて、新居の近くのスーパーである程度家庭用品を購入して、一人で設置していく。
一人で夜ご飯を食べて、やっぱり悟へもう一度電話をする。
でも、出ない。
私は、騙されてるのだろうか。
そんな不安もうまれてくる。
アパートは2階建て。
下は新婚夫婦のようで、共働きなのか、昼間は静かで夜になると小さく話し声が聞こえてくる。
隣は住んでるみたいだが、生活感がないくらい全く静かで、ほとんど居ないようだ。
その下は、空き部屋。
3日間一人で過ごして、痺れを切らした私は、悟へ連続で電話を何度も入れ、とにかく履歴を残した。
すると、
「トシコさん!一体なんなの!?仕事してる最中に何度も電話するのはやめてくれよ!」
不機嫌そうに、夜の22時過ぎに電話が掛かってきた。
「今も仕事してるの?だって電話連絡全然ないんだもの、おかしいじゃない!」
なんとなく耳を澄ますと、ガヤガヤと話し声とグラスやお皿の鳴る音がする。
まさか居酒屋…?
「今も仕事だよ!」
以外にも即座にそう答えが返ってきた。
「嘘つき!外に居るんでしょ?!」
「今日は新しく部署異動してきた上司の歓迎会なんだ!これは大切は仕事の一貫だよ!全く会社勤めもした事のない人はこれだから困るな!」
何よ、それ。
酷い!
「いつ悟は、ここに引っ越して来れるの?きちんと答えて!このままじゃ、私一人で引っ越してきたみたいじゃないの!一人暮らしするために私はここに来たんじゃない!」
私は一気に涙が出て、思わず大きな声で言ってしまった。
「分かった、分かった!とにかく来週荷物をまとめて、そっちに行くから!それまでは、俺に仕事に集中できる時間を与えてくれよ!」
えっ…?荷物、まとめてなかったの?
仕事に集中?
何故それを今?
私は返す言葉がなかった。
あまりの呆れた言いぐさに。
そして電話は身勝手に切られた。
私は、一体、なんなの?
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