3人が本棚に入れています
本棚に追加
ある土曜の休み、悟は何故か午前中に起きてシャワーを浴びていた。
土日はいつもお昼過ぎに起きるのに。
どこかに出掛けるのだろうか…。
私は自分の部屋で、物音を聞いて探る。
すると携帯電話が鳴った。
会社?…それとも実家?…
「おはよう!今から出掛けるから、お昼には、そっちの駅に着くよ」
誰かと待ち合わせ?
電車で、どこへ?
お昼には着くって事は、そんなに遠くない。
「大丈夫だよ、こっちの心配はしなくていいから」
笑って話している。
ずいぶんと親しげに。
悟の母親か?…やっぱり実家?…
「ハッハッハ!…ハッハッハ!…話はまた後で聞くから、とりあえず電話切るからね!」
うるさい!こんな休みの午前中に、お休みの日はみんな家の中に居るのに、あんな大笑いして…。
耳が痛くなる…。
足音が私の部屋に近付いてきて、私は布団の中にすぐに隠れた。
パシン!
ふすまが勢いよく開く。
そして、
「寝てるとこ悪いけど、今夜は遅くなる。食事は要らないから」
さっきとは全然違う声のトーン。
とても低い声で言われた。
私は寝ているふりをして、一言も言葉を掛けない。
なんなんの、この差は。
なんて性格の悪い、陰湿な人なんだろう。
私を一体なんだと思ってるのか。
まだ、実は籍も入れて貰っていない。
婚姻届も書いていないのだ。
この話を持ち掛けても悟は、
「まだいい、今は仕事が忙しいから」と向き合う気もなく、数ヶ月が経っている。
暴言や暴力、乱暴ばかりされて、あとは放ったらかしの私。
私はこの街に何しに来たのだろう。
繰り返し、そう自分に問うばかり。
最初のコメントを投稿しよう!