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1INPUT→たった一人で新居へ
今日は引っ越しの日。
実家暮らしも昨晩で最後。
長年続けてきたバイト先の人たちにも、結婚をするので寿退社だ言って、送別会も開いてもらい、お祝いの品までもらった。
貯蓄もあまりないし、お金の問題もあり、結婚式は挙げず、まずは二人で探した新居での生活費にお金を当てる事にした。
引っ越しは自分たちでなるべく済まそうだなんて、彼が言うから、私は荷物をまとめ、彼の到着を待っていると、携帯に電話が入った。
「ごめんね、トシコさん、車やっぱり借りれなくなて、今日の引っ越しはキャンセル」
キャンセル?
レンタカーなのに?
借りれなくなる事なんてあるの?
予約して借りるのに予約が出来なかったって事?
そんな事ある?
「えっ?いや、その、悟の車でもいいんだけど。今日鍵渡しだから、時間までには絶対に行かないと」
悟は、こないだもギリギリで賃貸会社に連絡をして、鍵渡しの日をキャンセルにした。
今回はさすがにそれは無かったものの…酷い。
「というか実はね、急遽仕事が入っちゃって。ごめんね、どうしても今日がいいなら、悪いんだけどトシコさんだけで行ってくれる?」
私だけでって、それは…。
そんな…私一人で引っ越すの?
「荷物準備しちゃったのに、こんなにも持って行けないよ、どうしよう…」
実家の玄関には私の荷物で山積み。
こんなに準備万端にしたのに。
私は車はペーパードライバーだから乗れないし、親も弟も仕事で、今は車は出して貰えない。
でも賃貸会社の人と待ち合せている。
今回は、こんな事でキャンセル、見送るだなんて出来ない。そんな事、絶対したくない。
「じゃあ、鍵だけ貰って帰れば?」
悟はあっさりと他人事のように簡単に言った。
電車で片道1時間以上もかかる場所なのに。
私は怒りと困惑で、一度深呼吸をして、そのまま溜息をついた。
「…もういいよ、自分でなんとかするから」
そう、結局私はこうやって自分一人でなんとかすると言ってしまうのだ。
これが良くない事だなんて、昔から分かってる。
でも…。
「ごめんね、トシコさん。俺もそのうち引っ越しするから。そういう事でヨロシク!」
そのうち引っ越しって…。
捨て台詞みたいに言わないで欲しい…。
始まったばかりのはずなのに。
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