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予兆
バイト帰りに鮭弁当とお茶を買い、大通りを歩いて、アパートへ向かう。
僕……佐藤平太はそこそこの会社で働く両親から生まれた1人息子。
親と先生から『とりあえず大学は出た方がいい』と言われて入った四年制大学に通い、コンビニのバイトでアパートの家賃と生活費を稼ぐ毎日。
黒くてミディアムな髪型に、へのへのもへじで書けそうな顔、服装は基本的に白いTシャツと藍色のジーパンな僕……本当に平凡。
最近の僕の悩みは1週間後の誕生日のことだ。
一生に一度の20歳の誕生日だからこそ、奮発してはしゃぎたいと思っているものの……お金がない。
今からでも短期バイトを始めようかと思うほどジリ貧だ。
今日だって本来なら休みなのに、無理を言ってバイトにしてもらったんだ。
「20歳になったら、何か変わらないかなって期待してるんだけどな」
何気なくぼやいたら、視線の先に求人のフリーペーパーが立て掛けてあるのを見つけ、ちょっとついてるかもとニヤつく僕。
「やっぱり1000円となると、力仕事だよな」
青い冊子のページを繰ると、頭も力も並々な僕には敵わない仕事ばかりが並んでいた。
「げっ……ここの店、月額サービスを始めたくせに給料安っ!」
それなりに発展しているこの街は流行りに乗るらしく、最近月額サービスをやる店が増えてきている。
「月額サービスってどうなんだろうな……使ったことないかも」
冊子から目を離して、ふと考えてみる。
例えばあそこの喫茶店のコーヒー飲み放題が月3000円だとすると、1日1杯で100円、それでーー。
「なぁ、にいちゃん」
肩を叩かれたと同時に声をかけられ、現実へと戻ってきた。
「はいいっ!」
ビクビクしながら振り向くと、タバコを咥え、黒色で肩まで付くくらいの髪にパーマがかかった男性がクククッと笑っていた。
「そんなに驚かせたか? そりゃ、すまんかったな」
今度は肩を2回叩いてくる彼。
目尻に皺を寄せても完全には潰れないくらいの大きい瞳に、口の上下に棚引く髭がある彼はワイルドなイケメンな気がする。
「……何か用ですか?」
でも警戒心剥き出しにして僕は問いかける。
「いや、なかなか特徴のないおにいさんやなぁと思うて……昔の俺にそっくり」
彼は大きい瞳でジッと見つめ、ニヤッと口角を上げた。
「あと、月額サービスがなんとかって言うてたから来てもうた」
これ、やるわと言って彼が渡して来たのは手作り感満載のチラシ。
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