2/5
前へ
/89ページ
次へ
 大柄(おおがら)で眼鏡をかけ、眉毛は太く、目は細かった。  髪はちじれ、(あぶれ)まみれだった。  41歳。  独身。  誰が見ても、ああそうだろうな、と思うような独身だった。  右田氏はよく仕事をさぼっていたから、他の従業員からは嫌われていた。  本人も恐らく嫌われているということに気が付いていたはずだ。  それでも右田氏はよく仕事をさぼった。  ストックで棚の整理をして来る、と言ってそこで居眠りをしていたし、煙草もよく裏口で吸っていた。  裏口の地面は、右田氏の踏み潰した煙草でいつもいっぱいだった。  掃除(そうじ)をするのは、右田氏ではない。  他の従業員だ。  私も右田氏のことが嫌いだった。  シフトが重なると憂鬱(ゆううつ)な気持ちになるし、苛立(いらだ)ちもした。  右田氏のいない所で、他の従業員と彼の悪口をよく言い合った。  しかし、右田氏は何故か店をクビにはならなかった。  店長も右田氏のサボり癖は知っていたはずだし、私も何度か右田氏を注意する店長を見たことがある。  かといって、右田氏は上に取り入るのが上手い、というタイプでもなかった。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加