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 何故クビにならないのか、誰もが不思議に思った。  しかし不思議に思う、ということはすぐに無くなり、それは鬱憤(うっぷん)に変わった。  同じ時給なのに。  同じ時間働いているはずなのに。  彼は仕事をしない。  一度、女性の従業員(右田氏よりも15歳も下だ)が、悲鳴のような声で右田氏を凶弾(きょうだん)した。  右田氏は首をすくめ、すいませんもうしません、と涙を浮かべて謝った。  けれど、右田氏はそれからも仕事をサボった。  その場では反省したふりをしただけ、だったのだ。  そのうち誰も右田氏を気に掛けなくなった。  それをいいことに、右田氏はもっと仕事をサボるようになった。  彼のサボることを述べていたら、いくらでも書けてしまうのでこの辺りで止めておく。  私が右田氏に興味が湧いたのは、彼が小説を書いているということを知った時からだった。  そして、小説の新人賞に投稿もしていた。  私も小説を書いていて、いくつかの小説の賞に応募したことがあった。  どれも一次通過すらしたことがなかったが。
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