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しかし、やっと遥斗が白状しだした話の方向性がマズイ方に向かってきた事で新と大和が今度は顔色を青くする。
「ちょっ、ちょとまて!」
「それってっ!!」
無垢で純粋な子犬だと思っていたのに、実は兄弟でっていう急にふられた過激さの振り幅の大きさに新も大和も動揺が隠せない。
取り敢えず、外で聞ける話しでないと思った瞬間、大和が「うち、近いから。うちにきて話そうか」
と遥斗を米俵の様に肩に抱え歩き出した。
「ん、ちょっとまずいかなとは俺もなんとなく思ってんだけど、さ。……実は俺、こんなに地味で目立たない奴なんだけど、高校に入った頃から、女装にハマっちゃって。周りにはナイショにしてたんだけど、引越しの時、その衣装が入った箱が偶然兄貴の友達の目に止まっちゃって。で引越しが終わった打ち上げの時、着て見せてって言われて……初めて人前で着てみたら、可愛いねって凄く褒めらて、調子のっちゃって……」
大和に差し出されたインスタントラーメンをすすりながら話す遥斗はいつも通りだ。その話の内容以外は。
あー。遥斗は女装が似合うと思う。普段は地味な見た目も、ちゃんと女装というベクトルを与えれば、可愛い男の娘として成り立つ姿しか目に浮かばない。
いや、絶対に可愛いはずだ!!
それが、どーして褒められた位で調子にのる?というか、どこまで調子に乗ったら両手首に痣が出来るんだ?!!
「踏み込んで聞いていいか?」
高級感溢れるマンションの最上階な上に、エレベーターを出たら玄関に直通という超セレブの家に連れてきた大和も同じく自分で作ったインスタントラーメンをすすりながらたずねる。
「うん。話せることなら」
「どこまで?」
「どこまでって何が?」
「キスとかしたのか?」
「ぶっっ!!!」
直球過ぎて、同じく大和が作ったラーメンをすすっている際中、鼻から出てしまいむせる新を横目に大和はレンゲを片手に軽く聞く。すげぇ軽い。
「ああ、そういう?」
「そういうのだ」
納得したと頷く遥斗がレンゲから唇を離して、子犬の様ににこりと笑った。
「最後まで?」
可愛い子犬が尻尾をふりながら首を傾げて言った言葉に俺のアパートの一室が丸々入りそうな程に広いリビングの空気が凍った。
ガシャンという大和のラーメンどんぶりにレンゲがダイブした音で新は我に返った。
「はっ!遥斗、『最後』の意味わかって言ってる?!」
思わず、箸とレンゲから手を放し、遥斗の華奢な両肩に手を伸ばし、ガクガクふってしまった。
「いくら俺でもわかるよ」
もう、ラーメン食べられないよぉと愚痴りながら、新の手を片手ずつ外した遥斗が、レンゲに集めたコーンを口に入れ咀嚼した後、ゴクリと飲んで笑った。
「最後までしてるよ。挿入も中出しも。勿論、口でも後ろの穴でもやってる。何なら、結腸まで挿入されてクポクポされるの大好きだし、後ろの穴は一度に二人挿入とかやってるから最後までで合ってるだろ?」
なんだよ、もう。みたいな拗ねた顔をして云われた内容に、単語に一瞬、異世界に飛ばされたかと思ったが、ここは大和の家のリビングで変わらない。
「俺の事、気持ち悪いって思った?」
どんぶりを両手で持ち上げ、ズズズッとスープを全部飲んだ後、テーブルに箸を置き、ぷはーとした遥斗の表情はいつも通りにに見せているが怯えている子犬のそれで、語尾だって震えていた。
思わず大和と視線を交わす。
「そんな事、思わない。俺は恋愛対象が男だからな。どちらかというと、遥斗がそういう事を知ってる事に興奮した」
「は?」
「そうだね。俺も気持ち悪くないよ?だって俺も男とヤってるし」
「え?」
大和と新の返事に遥斗が目を白黒させている。
「だって女装してんだよ?兄貴達相手だよ?相手男で、俺も男なのに、そういう事、してんだよ?」
「だから言ってるだろ?俺も男が好きだし、新は男とヤってる。理解したか??」
「へ?……じゃ、仲間?」
「そうなるな」
「そうだね」
目尻に透明な雫をのせたまま嬉しそうに首を傾げた遥斗に俺達は頷いてみせた。
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