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結局離婚は決定で。
「仕事を達成した時の喜びは何よりも爽快で、その充実感は何よりの幸せを与えてくれるって。だから仕事は絶対に捨てられないんだって」
「あぁ、確か俺にもそんな風に言ってました」
所変わって、ここは閉店後のBAR雑草。
昨晩、茜から言われた衝撃的な別れの愚痴をこぼしに、彼女の弟である大和君の元へと訪れた。
「毅はグループの後継ぎだから、親権も養育も俺に任せるってさ。しかも毅は毅で前から知っていたらしく冷静だし…」
「毅君らしい…」
「大和君!そこは感心するとこじゃないってー…」
大和君が作ってくれるカクテルを、次から次へとがぶ飲みしていく。
「崇さん、もうお酒は止めておきましょう」
「飲まなきゃやってらんないよ!離婚なんて親父にバレたら殺される…あの親父が勝手に推薦したのに…どう言い訳すればいいんだ…」
カウンターにうなだれ、カクテルグラスについた水滴を撫でる。
「…崇さん、そんなにおじさんにバレるのが嫌なんですか?」
「当たり前っ!茜とは昔からお互いの家のためだけに結婚が決まっていたんだからな…グループの後継ぎが奥さんに捨てられたなんて世間体が悪いってだけじゃすまされない…茜だってその位分かってるはずなのに…」
「崇さん」
「大和君、慰めて…」
撫でようとしてくれていたのだろうか。俺の頭へと遠慮がちに伸ばされている大和君の手を掴んだ。
その手は俺より少し大きく、さっきまでシェイカーを振っていたせいかとても暖かい。
指を絡ませていると不意に手が離れ、カウンターに突っ伏している俺の視界から大和君が消えた。
そして…
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