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これを聞いた時の俺は、かつて無い程の間抜け面をしたことだろう。
「あ…茜を…?大和君じゃなくて…?」
「俺は関係ないです?湯沢さんは学生時代からずっと姉ちゃんを想い続けていて。偶然湯沢さんに会った時に姉ちゃんの近況を聞かれて、公にする前だったのに話しちゃったんです。
そしたら店で崇さんにひどい態度をするし、ヘタレの癖に姉ちゃんを俺の嫁に!とか、出来るわけないのに。ただでさえ崇さんは仕事や離婚したばかりで大変なのに俺のせいで煩わしい思いをさせたのが申し訳なくて」
くくっ、何だそうだったのか……良かった!
俺復活!!
そうと決まれば、大和君のイスを回転させ俺の方へ向かせる。
そして向かい合わせにすると、俺はそのまま大和君の膝の上へと跨った。
「た、崇さん!?何を」
「うん、何か言いたい事はたくさんあるけど、それでも俺はね、大和君が別れ話をしようとしたんじゃなくて安心してる」
俺は目の前にいる彼が愛しくて溜まらず思い切り大和君を抱き締める。
「くっ苦しい!意味が分かんな…」
俺の行動が理解出来ずジタバタする大和君を更に抱き締めながら、何より恐いことに気付けたきっかけに感謝した。
もう俺の側から離れる事は許さないかもしれない。
どんな手を使ったとしても。
行動の意味が分からなくてジタバタしている大和君を更に力を込めて抱き締めながら、そう思った。
《END》
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