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「ティ・アーモ大和君!久しぶりだね」
仕事が早く片付いたこともあり、開店前のBAR雑草にやって来た。
いつもと違うのは、今の言葉が毅の口から出たということだ。
「毅君待ってたよ!久しぶりに会えて嬉しいな」
グラスを磨きながら普段より笑顔二割り増しの大和君は、カウンター越しに毅の頭を撫でた。
「大和くーん、俺もいるよ!忘れないで」
「崇さん…」
クスクス笑っていつものカウンター席に案内された。
そこでふと、どす黒いオーラを放っている人間がいた事に気付く。
「どうも…」
やたら不機嫌な低い声で挨拶をされたので俺は逆に、
「湯沢先生ご機嫌いかがですか?暇なんですか?茜との息子の毅でございます」
満面の笑みで湯沢に毅を紹介した。
「この子が茜さんの…」
今度はアホみたいな笑顔を浮かべて毅の手を取り、無理やり握手をしだす。
「止めてもらえません?茜の息子が恐がるんで」
俺はわざとらしく毅を抱き締め湯沢から離すと、先日の仕返しとばかりに茜の子供だということを主張してやる。
こいつのせいで無駄に悩んだのだから当然の報いだ。
「どうしてこんなのが茜さんと…」
ブツブツ独り言を繰り返すのを横で眺めていると、
「父さん、この人気持ち悪いよ」
毅が俺に負けないくらい冷たい目をして湯沢を見ていた。
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