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毅にはキャラクターの顔がお皿とオムライスの上に器用に描かれていた。
「大和君ありがとう!いただきます」
「召し上がれ」
そして俺の前には…
普通のオムライス。
「大和君、愛のメッ「さあ崇さんも食べて下さい」…いただきます」
見事に遮られ、仕方なく静かにご飯を食べる。
「大和、おかわり~」
「湯沢先輩、今日はもう駄目ですよ。ずっと飲みっぱなしじゃないですか」
お酒の代わりに水を出して諫めてやってる。
大和君は優しいな、そんな奴放っておけばいいのに!
心の中でブーイングをしながらオムライスを頬張る。
「大和まで俺に冷たい、どうせ俺なんて…」
しくしく泣き始めたこいつを見て、大和君はさっさとタクシーを拾いに店を出た。
いつもこうだからと言って。
全く迷惑な酔い方だ。
そんなうなだれている湯沢の側に毅がトコトコと歩いていき耳元で何か言った。
「毅?」
「何でもないよ」
子供らしくない顔で笑うと、何事も無かったように席に戻ってオムライスを食べ始める。
一方、湯沢はさっきまでの酔いつぶれが嘘のように直立不動で財布から万札を取り出して店を出て行ってしまった。
一体なんなんだ?
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