大切なお友達

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私の名前は『千紗(ちさ)』、4年制大学の文学部に所属する1年生で19歳の女子大生だ。 私は東京都内の大学に入学したため、静岡から上京して都内の賃貸アパートで1人暮らしをしている。 入学したばかりの4月頃は、はじめての1人暮らしにワクワクしていたけれど、10月に入ると1人での生活が寂しく感じられるようになってきた。 そもそも私はどちらかというと内向的で、積極的に友達を作るタイプではない。 大学ではそれなりに友達はいるけれど、休日に頻繁に会って遊びに行くような仲の良い友達はいない。 そんな私の心の友達は、小学生の頃から大切にしている女の子の人形だ。 その女の子の人形は、少し茶色がかったロングストレートの髪形、グレーのニットに紺のジーンズのパンツ、靴は黒のハイヒール、肩に白のショルダーバックをかけている。 そして顔は色白で細面、クリっとしたまん丸い目がかわいらしい美人系の女の子だ。 静岡の実家から東京都内のアパートに引っ越すとき、この女の子の人形だけは肌身離さず持ってきて、アパートの部屋のベットの近くに置いてある。 私は家に1人でいるときは、まるで本当に実在する友達のように、その女の子の人形と会話している。 そんなある土曜日の休日、この日は講義がないため朝10時過ぎに目を覚ますと、ソファーに女の子が座っていて私の方をじっと見ていた。 (えっ、誰?) 私が混乱してその女の子を見つめていると、 「おはよう」 といって女の子はニコッと笑って私に挨拶してくれた。 私も思わず、 「おはよう」 と挨拶したけれど、その女の子はどこか見覚えがあった。 「貴女は誰?」 私が聞くとその女の子は、 「私は『真由(まゆ)』」 と答えてくれた。 私が慌ててベットの周りを見渡すと、女の子の人形が見当たらなかった。 その女の子が着ている服装は、女の子の人形が着ていたものそのままだった。 真由という名前は、私が女の子の人形につけた名前だった。
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