どうせ、ただの幼馴染だから。

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 朝、メイクをする時間が一番嫌いだ。私は不器用だから、いつも一度でアイラインを上手く引けない。何度かやり直して、やっと綺麗な目が完成する。こんなことしなくても、周りから浮かないくらい整った顔立ちだったら良かったのだけど。なんて毎回思いながら、制服の袖に腕を通し、スカートを短くして履く。  だけど、それらの準備をし終えたら、至福の時が待っている。  私は鞄を持って自室を出ると階段を駆け下り、冷蔵庫からウインナーを一パック取り出して三分で食べ切ると、卵焼きを作り始める。  馬鹿で鈍感な、私の大好きな幼馴染、蒼太の為に。  不器用だから、凝ったお弁当なんて作れなくて。溶き卵に蒼太の好きなポテトチップスを砕いて入れるだけのアレンジをするのが精一杯だけど。  それでも、蒼太はいつも「ありがとう」って目の前で嬉しそうに頬張ってくれるから。今日も誰よりも近くであの笑顔が見られるんだと思うと、どんな日だって、喜んで起きて学校に行きたくなるんだ。  蒼太の幼馴染で、本当によかった。  焦げついてしまった卵焼きをラップで包んでいると、ピコン、とスマホが鳴る。私は溜息を吐き、スマホ画面に目をやる。やっぱり、蒼太からメッセージがきていた。
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