どうせ、ただの幼馴染だから。

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 ――ありがとう。  そう言って笑う君の顔が、ずっと、頭から離れない。  全然、いつもの笑顔じゃなくて。  切なげで、どこか大人びていて。  こちらを真っすぐに見ているのに、手を伸ばして触れようとしたら、いなくなってしまいそうで。  君じゃないみたいだった。  ……いや、違う。  こんなこと思う自分が、自分じゃない。  バカだな、本当に。今更気付くなんて。  はぁー、と深く長い溜息を吐くと、布団のなかで火照った顔を両手で覆い、呟いた。 「……………好き、だったのか」  それから、君の鈍感さに腹立つ日々が始まった。
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