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【Prologue】
「いい度胸をしてる、この俺を相手に」
この世に一人だけ生き残ったかのような勝ち気な態度、この世のものとは思えない鋭い視線──なんて強欲な眼差しで私を絡め取るのだろう。
初めてそれを至近距離で見つめた時、瞳のドス黒さにわなないた覚えがある。生まれつきか単に性格が悪いのか、はたまた過去に問題アリか、知る由もないけれど。私と同様大切な何かを手放し、光を失ったのではないか──そんな気がしてならなかった。
だからと言って、私存亡の危機に直面している今お情けをかけてあげるほど私はお人好しではないのですが。
「こうすれば世界中のオンナが言いなりになるとでも思っていらっしゃるんですか? とんだ勘違い御曹司」
「嫌ならこの手を振り解けば良いだろう、出来るものなら」
「〜〜〜セクハラパワハラ反対! んぐっ」
さて只今どのような体勢かと申しますと、大変遺憾ながら苦手な上司に組み敷かれています、重役デスクの上に。と言うより首を締められています、私がささやかな反抗を込めて淹れた珈琲そっちのけで。
──あなたどうかしちゃってる。
即刻振り解きたいところだがお生憎様、そうもいかないのだ。悔しい、カオとカネだけのこんな男の言いなりになっているなんて。
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