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「ーーー2週間の自宅待機?」
『はい。輝春さんは特別無休休暇として扱われますので、欠勤にはなりません』
「ちょ、ちょっと待ってよ美香さん。いや、星木さん」
つい癖で名前呼びをしてしまい、社用電話だと慌てて呼び直す。
通話相手の周りには、人事部の他の社員もいるはずだ。
「確かに、カカオーーー接触確認アプリで濃厚接触者とは出ましたよ。仕事帰りにカフェで珈琲飲んだ時に、隣に座ってた男が発症したとかで……。でも陰性だったんですって」
『PCR検査で陰性でも、後になって発症することもありますので。2週間は自宅待機と社内規定で決まってまして』
「俺の仕事どうするんですか。大口顧客への訪問予定もあるんですよ」
「お仕事は営業部の方で回しますので、輝春さんが心配されることはありません」
「俺はバイ菌……ウイルス扱いってことですか?」
『違います! ……ご理解ください』
「ーーー社内規定はともかく、美香さんはどう思ってるの」
『はい? どういうことですか』
「会社には行かないよ。でも今日の帰り、うちに来てくれない? 俺がそっちの家に行ってもいいけど」
『何でそうなるんですか?』
「先月から付き合ってるよね、俺たち」
『そうですけど』
「なら、自宅で会っても当たり前では?」
『……すみません。後でまたご連絡します』
ため息のようなものが聞こえた後、固い声が聞こえて。
電話はすぐに切れた。
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