<4>

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

<4>

職場からの電話の後、結局美香はうちへは来なかった。 電話をしてもメールを送っても「今はお会いできません、ごめんなさい」としか返答がなく、意地になり連絡をやめた。 1週間ほど経った後。 迂闊に外出もままならないので、ゲームやら電子マンガで夜更かしをしていて。 目が覚めると、時刻は昼を過ぎていた。 スマホを開くと、一通のメール。 「アパートまで来たんですけど、インターフォンにも出ないので郵便受けに入れておきます」 何だと? 時計は12時を回っている。仕事前に彼女が来たなら8時頃だろう。 封筒に書かれていたのは、確かに彼女の名前だった。 開けてみると、一筆箋に一言。 『お会いできなくてすみません。わたしが何度も行っている神社のお守りを取り寄せたのでお送りします。これからも元気でいられますように』 「いや何これ」 恋人の健康を願う、病気に勝つって意味のお守りなんだろうけど。 本当に会いたければ予定を合わせて、起きてる時間に訪ねるだろう。 彼女なりの気遣いなのだろうが、頑なに顔を合わせようとしない頑固さに腹が立つ。 「流石は氷の女」と、内心で悪態をついた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!