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「やっぱ山の空気は違うねぇ」 澄んだ湧き水で例えられるように、山の濃い空気は甘い味がするような気さえする。 誰もいない、登山者用駐車場に愛車を止めて出ると。 ドアロックをかけながら、鮮やかな深緑を纏った山々に向かって呟く。 ーーー人がいないのは、安心だ。 この約1年間は、うんざりする生活のオンパレードだった。 マスクがないと、外出すらもままならない世界。 疑心暗鬼になり、毎日心が疲弊していった。 きっかけは忌々しいPCR検査だったとはいえ、こんな時世にハイキングまがいの登山に来れるだけ恵まれているのだと思おう。 教えてもらったサンカヨウの群生地の写真を保存し、登山者用地図と見比べながら山を登り始めた。 深い森に足を踏み出すと、雨の匂いがむわりと鼻をついた。
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