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「っ、とと……、うわっ!」
登り始めてから1時間もしない頃だったと思う。
傾斜の強い山道、うっかり濡れた草木の上を踏んだ時に足を滑らせつんのめってしまった。
咄嗟に左手をついたものの、手首に激痛を感じ。
一回転半ほど転げるようにして、幸いそこで身体が止まった。
ーーーその瞬間。
勢いで左の胸ポケットに入れていたお守りが飛び出して、転げ落ちていくのを見た。
「ッッッ、あ」
慌てて追いかけようとするが、薄暗く足元も悪い山の中。
小さなお守りは、あっという間にどこかへ消えて見えなくなってしまった。
「あー……、くそ」
どうする? ここで探し回るか?
一瞬だけ考えたが、すぐに諦める。
草木の生い茂った山中で、あんな小さなものを見つけるのは至難の技だ。
貰ってあまり嬉しくなかったものだというのも、正直あった。
神社の名前は覚えているし、帰ったら同じものを取り寄せて持っていればいい。
頭を切り替えて、山登りを再開した。
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