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ざっと10年。
考えてみれば意外に付き合いが長い。
知り合ったばかりの頃、俺はまだ小学にも上がっていないくらいで、和斗さんもまだあどけなさの残る高校生だった。
夕方、たった一人きりの公園。
まだ慣れない土地で、俺は不安に押し潰されそうで。
同い年くらいの子供が、迎えに来た母親に手を引かれて帰っていく、そんな目の前の光景を当たり前とも思えないで…。
そういえば、あの時も突然雨が降ってきたんだっけ。
冷たいし、痛いし、雨なんか大嫌いだった。
けど、幼い俺の思考は至って単純で…傘を持って駆け寄って来た見知らぬ高校生の姿がまるでヒーローのように見えた。
たとえ拙い英語(と言っていいかも不明瞭だったが)であわあわと声を掛けてくる姿が、今となっては少し滑稽に思えても…嬉しかった。
誰かが俺を見つけてくれた。それがとにかく嬉しかったのだ。
恩人、と言ったら大袈裟だと言われてしまうが、俺にとっては大袈裟でも何でもない。
その日から俺が底知れない寂しさを抱えたまま過ごさずに済んだのは、毎日同じ時間にやって来ては屈託のない笑顔を向けてくれる和斗さんの存在のお陰だったのだから。
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