17人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁーっ。3年で随分景色も変わるもんだな…。」
「あぁ、やっぱりそうなんですね。最近見慣れてきたからあまり感じませんでした。」
「…慣れ、ねぇ。」
しみじみと噛み締めるように呟いた和斗さんが、手にしていたカップでコーヒーを一口啜った。
ふぅっと溜息を漏らすと、湯気が少し揺らぐ。
「でも…」と和斗さんはまた呟いた。
そして、変わらんものもあるな、と安堵したような笑みを浮かべる。
「美味しいですか?」
俺がそう尋ねると、いやぁ、と和斗さんが首を横に振る。
「まあまあだな。」
「じゃあ、どうして飲むんです?」
「さぁ。・・・ほら、なんつーの。癖になんだよな、何故か。」
「癖、ですか。」
大して口に合わないコーヒーをわざわざ頼んで、ほんの少しずつ啜っては、ほうっと軽く息を吐く和斗さん。
俺には未だに不思議でしかないが、和斗さんらしいと言えばらしかった。
前にもこんな会話、したことがあった。
いつの事だったかな。
でも確かなのは、まだ和斗さんが俺の手の届くところにいた時の事だったってこと。
そうだ、あの時も・・・。
「和斗さん・・・。何かあったんですか?」
おもむろに俺の口から飛び出た言葉は、あの時も、それに今もまた、和斗さんの核心をついたらしかった。
「おっ、まえ・・・」
エスパーだなぁ。そう和斗さんは呟いて、困ったように笑う。
俺は和斗さんが自ずと話を切り出すのを、ただ黙ってじっと待った。
最初のコメントを投稿しよう!