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雨の日
ああ、今日もきっとあの人はいない。
そう思うと家に帰る足取りすら重い。
自分1人が食べるだけの食事を作るのがどうにも億劫で、スーパーで値切れた惣菜だかを適当に見繕ってから帰路に着いた。
もう随分と慣れたように感じていたが、ふとした時、特に今日みたく不意に雨が降る時なんかは途端にモヤモヤとした感情が胸の中で消化不良を引き起こす。
雨の日はいつも俺よりあの人の方が先に帰宅していた。
俺がすぶ濡れて帰ると、あの人は決まってタオルを片手に玄関まで駆けてきて、小言混じりにわしわしと俺の髪を拭くのだ。
それが嬉しくて…だから雨が好きだった。
あの人は雨が憂鬱だと言っていたが、俺はそうは思わなかった。
いい事が起こる日は、いつも雨。
「…だったのになぁ。」
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