3幕

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ソラの部屋。 ソラ、バイオリンをケースから出す。音をひとつ、ふたつ奏でて。 ソラ「分かったよ。なんで俺にカスミが見えるのか。霊感もない俺が、カスミを見つけられたわけが」 カスミ「なあに?」 ソラ「バイオリンだよ。俺も同じなんだ。 もう何年も弾いてない。 ……コンクールで失敗したんだ。 うまく弾けないことがくやしくて、俺に勝ったやつが憎らしくて、 そんな自分がイヤになってやめてしまった」 カスミ「……そうだったの」 ソラ「でも本当は、ずっと……もう一回弾きたかった」 カスミ「あたしと同じね(ほほえむ)」 ソラ「きっとバイオリンが、俺たちをつないだんだ。バイオリンの音色がシンクロして」 カスミ「響き合った」 ソラ(バイオリンをかまえて)じゃあ、弾くよ。久しぶりだから、うまく弾けるか分からないけど」 カスミ「ソラくん。ありがとう」 ソラ(黙る) カスミ「ソラくんが、なんでもできる人だったら、きっとあたしたち、出会わなかったね。 うまくいかないくやしさを知っていたから、ソラくんは、いま、バイオリンを弾くんだわ」 ソラ「……聞いたら、とっとと成仏しなよ」 カスミ「うん。きっと」 ソラ、バイオリンを奏で始める。 きらきら星変奏曲。
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