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日曜日。
いつもの駅のホームで待ち合わせた。
莉子は、白いティアードのふんわりしたブラウスに、薄いブルーのジーンズをあわせている。
いつもはおろして肩にかかっている髪は、編みこまれた複雑なアップスタイルになっている。
「髪……」
琥珀が思わず指をさすと、
「みそら先輩に、やり方教えてもらったの。変じゃない?」と、莉子は心配そうに言う。
「変」
「エッ?!」
「いや嘘……」
髪をあげているだけで、いつもと違って見えて新鮮だ。
だけど、かわいい、なんて言えるわけがない。
恥ずかしすぎる!
やってきた電車に乗り込むと、いつものように並んで座った。
莉子は、小さな合皮のリュックを、ひざの上にのせている。
そのリュックの中から文庫本を取り出して、琥珀にちらりと表紙を見せる。
「あのね、今日のプラネタリウムの特別プログラム、『銀河鉄道の夜』なんだって」
「ああ、宮沢賢治だっけ」
「うん。ちょっと予習しようと思って」
莉子は、ページをめくり、黙々と小説を読みはじめた。
いつもの通学のときと変わらない。
デートだからと言って、変に意識することはないのだろう。
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