二人の初デート!!

3/8
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
自販機でチケットを二枚買い、短い列に並んで、プラネタリウムの中に入った。 日曜のわりに、客の数は多くはない。 家族連れやカップルがほとんどのようだ。 中は薄暗くて、非常ドアを示す緑の看板だけが光っている。 椅子に座ってレバーを倒すと、思いがけないくらい大きく、ガクン、と背もたれが倒れた。 ほとんど仰向けの状態だ。 「わ」と小さく叫び、お互いに目を合わせて苦笑する。 椅子の位置を調整し、座りなおすと、視界の先、まるいドーム形の天井に星がうすく光っている。 『本日は、ご来場ありがとうございます……』 アナウンスが鳴り、静かなメロディが流れだして、どんどん暗くなってくる。 星は輝きを増し、点と点で結ばれて、さまざまな星座を作る。 『こちらは、本日午後八時ごろの、福島の空です……』 眠るのに最適な環境だったので、琥珀はついつい目を閉じた。 ウトウトしかけて、ハッとする。 だめだ。 眠ってはいけない。 初デートで眠るとか……ダメすぎだろ! でも……莉子も寝てたりして? ちらりと隣の様子をうかがうと、莉子がこっちを見て笑っている。 ……起きてた。 失態をごまかしたいような気持ちになった。 莉子の左手に、右手を軽くぶつけてみると、 莉子のほうから、優しく手を握ってくれた。 目が合うと、「えへへ」と、はにかんだ笑みを向けてくる。 ぐう。可愛いな。 手が小さくて柔らかい。 こんなことで……、と琥珀は思う。 ただ隣に座って、手をつないでいる、というだけのことだ。 こんなことで、嬉しいだなんて、おかしい。 どうかしている! 天井には、作り物の星がキラキラと瞬いている。 いつのまにか『銀河鉄道の夜』の物語がはじまっているようだ。 ジョバンニとカムパネルラを乗せた銀河鉄道は、様々な星座をめぐって、旅をする。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!