二人の初デート!!

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琥珀は、ふうっと息をはいて、頬杖をついた。 「……莉子ってあんまり怒らないよなあ。どうやったら怒るわけ? おおらかっていうかさ……」 「そう? 怒るときは怒るよ、わたしだって」 莉子は、オレンジジュースを一口すすった。 「だけど、今はね……。こうやって、琥珀とふたりで出かけて、おしゃべりして……。 すごく楽しいっていうか、ホンワカした気分なんだ。 だからなんでも許せちゃいそうで、怒る気持ちにもならないの」 「ふうん……」 「琥珀のおかげだよ」 「あ、そう……」 琥珀は、思わず目をそらした。 ジュースの氷を、乱暴にストローで混ぜる。 「お前って変な奴だよな」 そう。莉子は、変な奴だ。 お人好しだし、ヘニャヘニャしてて頼りないし。 時々、人の話聞いてないし。 どうして好きになったんだろう。 分からない。 分からないけど、莉子といると、自分まで、少し優しい人間になれる気がする。 「ねえ、やっぱり服の染み目立つ?  リュック背負えば見えないよね! どうかなあ?」 星座のキーホルダーのついたリュックを背負って、莉子が話しかけてくる。 リュックからはみ出したメロンジュースの染みの形が、何かに似ている。 ちょうちょ? それとも、鳥の羽――? 莉子の手をとって、琥珀はフワリと指を絡める。 その小さなぬくもりが、舞い上がりそうになるほどに、嬉しくて、いとおしい。 * 番外編、おしまい。 →次のページはあとがきです。
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