ササヤカな目(eye)

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電話を切った後 社内コンペに応募する作品を 一から考え直していました。 今日の朝、課長から 「コンセプトから練り直しだね」と ダメ出しされたばかりです。 自信あったのにな。 パラパラと過去の作品を眺めても 何にもアイデアが降りてきません。 重いため息をつきました。 三年前の優秀作品に 先輩社員の三鷹里美(みたかさとみ)の名前を 見つけました。 社員としても女としても私の方が上よ? と言わんばかりの笑みが 目の前に浮かびます。 モヤモヤした思いが生まれた時 「カアッカアッ!」 暗い窓の外からカラスの鳴き声が 聞こえてきました。 こんな時間にカラスが鳴いてるなんて 薄気味悪い。 ベッドに寝転がって布団を被ります。 携帯でネットニュースを見ていると 風の音がビュービューと鳴り始め 窓をガタガタと揺らします。 何か怖いな。もう寝よう。 電気をつけたまま目を閉じました。 うっすら金縛りにあいそうな気配がして ガバッと体を起こしました。 意識があるのに体が動かないのは 理由が霊的でも病的でも怖すぎます。 ふと目に黒いマフラーを巻いたあおすけと 目が合いました。 『大丈夫。僕、最強だよ?』 そう言われた気がして ベッドにあおすけを迎え入れて 初めてぎゅうっと抱きしめました。 マフラーから微かに西川さんの匂いがします。 「私も充電して欲しい」 本人には絶対言わない台詞を口にして もう一度首に手を回すと 指先に縫い目が当たりました。 ん? 何この出っ張り? あおすけをぐるりと反転させて 首の後ろを確かめると ファスナーの持ち手に 黒い小袋がぶら下がっています。 小袋からは爽やかな香りがします。 西川さんの匂い。 嗅いでいると少し落ち着きました。 少し開いたファスナーを ジジジ……と開けました。 中から手紙が出てきました。
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