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そして桜の頃。
中学校の制服と一緒に、それはわたしの手元に届いた。
長い黒髪のメディカル・ウィッグ。
ウィッグの黒髪はとても艶やかで、光にさらすとほんのりと青みを帯びていた。まるでお母さんの髪の毛みたいだった。
神様は命の代価にわたしの髪を奪った。
でも、神様はわたしに颯太くんとの出会いを与えてくれて、そして髪と一緒に大きな幸せを返してくれた。
颯太くんはまたわたしのために髪を伸ばすと言ってくれた。
「どうしてそんなに優しくするの?」
そんな質問を颯太くんにしたことがあった。
でも、颯太くんは笑うだけでわたしの問いには答えてくれなかった。
その笑顔はとても眩しかった。
その時のことを思い出しながら柔らかなウィッグ顔を埋めると、ふわりと颯太くんの香りがした。
「ありがとう、颯太くん」
いまは照れくさくて颯太くんの顔を見ながらは言えそうにないけど、いつかきっと感謝の言葉を伝えよう。わたしの気持ちを添えて。
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