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次の日、麿慶二さんから連絡がきた。
その内容は店長が死んだというものだった。
店長は喫煙所の中で両腕を欠損した状態でみつかっており、死因は出血死だそうだ。そしてそれとは別に喫煙所の中には行方不明届けの出ていた青年のバラバラ死体が発見された。
店長の遺体の側には遺言書が残されており、その遺言にはこうかかれていた。
私が青年を殺しました、と。
私はこの依頼をもらってからすぐにその建物で起きた事件を調べていた。
その建物では同じような事件が過去数年の間に度々おきていたのだ。
その店を建てた最初の男は片手がないというハンディキャップがあるにもかかわらず素晴らしい手つきで旨いハンバーグを提供してくれると町でも評判だった。
だが。
そのハンバーグに使っている肉が問題だったのだ。
そのハンバーグに使っていた材料が……。
そう。人肉だ。
その男は町で若い男、女を誘っては冷凍倉庫に、閉じ込め、殺し、そしてその肉をミンチにしてお客に提供していたという。だがその男の悪事はすぐに警察に見つかってしまう。その後男は刑務所に送られることになる。男は服役中よく、あの肉の味が忘れられないと、うわ言のようにぼやいていたそうだ。
そして男は檻の中で手を切断して自殺した。
檻の中の壁という壁には何かのレシピが赤黒い字で書いてあった。
それは今回自殺した店長と全く同じだった。
ただ部屋の清掃をした刑務官はおかしく思った。切断した右手はどこに消えたのかと。そしてこの壁に書かれている最後の自分という文字の意味。
私はキーボードを叩く手を止め目頭を押さえながら一息吐く。
これで私の霊鑑定士としての仕事は終わった。私は怪奇事件が本当に霊によるものなのかジャッジするもの。霊鑑定士。そして怪奇専門のフリーライターでもある。
私はポットのコーヒーをカップに注ぐとそれを持って窓辺に座った。
上を見上げると眩い光を放った満月が私の目に映る。
今日も月が綺麗ですね。きっと霊たちも喜んでいるでしょう。
ふふっ、と口の端を上げて笑う。
そのとき、ピロンと私のスマホが鳴った。コーヒーをテーブルに置きスマホを見ると麿慶二さんからだった。
自然と顔がにやけてしまう。
さ、次の依頼に向けて調べものをしましょうか。
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