力を示せ?

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side団長 「上手いな」 そう自分の口から言葉が溢れたのを感じ、俺はいつの間にか試合に夢中になっていた事にハッとした。 副団長のミシュエルが静かに話しかけてくる。 「カイ君、なんで木剣を使わないんでしょう。小さな刃物をあれだけ扱えるなら、木剣であればどれ程の威力になるか······。」 そこに獣人の女騎士、ジュレが会話に加わる。 彼女は一介の騎士だが、その地位にしておくには勿体ないほど観察眼に優れている。 「彼、剣は得意じゃ無いんだと思います。なんだか持ち方が安定していないし。むしろ邪魔そうな目で見てましたよ。」 そこまで言って、ジュレは表情を固くする。 「それに比べて、ペーパーナイフの扱い方はおかしいです。」 ミシュエルが不思議そうな顔をしてジュレに聞いた。 「そうかな?かなり上手だと思うけど。」 「······そういう意味じゃないです。」 幾らなんでも、ただの平民の出身者があんなに上手に使いこなせる筈がないんです。 そう言ったジュレに、俺も心の中で同意した。 平民であっても刃物を使う機会は多くある。 騎士に志願して受かったくらいなんだから、当然カイは扱いが上手いんだろう。 だが。 「あれは、戦闘経験者の動きだな。おまけにペーパーナイフであれほど綺麗に切れるなんて、どれ程の速さで腕を動かしたのか。」 一年前も、こいつは出来る奴だと何となく感じていた。 だから、異例でありながらも騎士団を抜けられるよりは、と一年間騎士団を離れることも許可した。 「········でも、これ程とは思っていなかったぞ。」 カイとジグムントは、相変わらず喧嘩している。 ジグムントはまだカイの異常性に気付いていないようだった。 カイがわざと前髪だけを切った事も、ペーパーナイフでは普通あんなことは出来ないという事も、カイの目が優位な立場に立った殺す者の視線であった事も。 カイが戦力になったことを素直に喜ぶべきか、明らかに自己報告している過去に合わない力を怪しむべきか。 「取り敢えず、試合は終了だ。カイが自分の実力を過小評価している可能性があるからな。力加減を誤ってジグムントが傷を負うことは避けたい。」 何の疑問から解決していけばいいのやら。 ああ、でも、あの人は喜びそうだな。あの人は力を誰よりも欲しているから。 国の政治に関わっている、大きな権力を持つ公爵家の当主。 組織を潰す事に執念を持っているその当主なら、どんなにカイの背景が黒くても、戦力になるならなんでも良い、と言いそうだ。 頭の中で苦手な計画を立てることを一生懸命しながら、俺はカイとジグムントに向かって歩き出した。
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