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「そこまでー。勝者はカイ。で異論はないな、ジグムント。」
「··········はい。」
団長の言葉にジグムントが渋々従う。
いやーよかったよかった。
まだ続けろって言われたら危なかった。
俺もうこれ以上出来る事ないからさ。
あれ、でもさっきから周りの視線が煩い··········?
なんか団長と副団長と、その他数人からの視線がビシビシ突き刺さって来るんだけど。
そんな周りの視線と俺を見比べ、団長が頭をかきながらやや疲れたように俺に言う。
「あー······取り敢えずカイは後で俺の執務室に来い。な?」
「うーい。」
「お前なあっ!団長になんて口の聞き方してるんだ!!」
そして相変わらずジグムントの声が大きい·······耳つぶれる·······
そうして決闘はお開きになり、そのまま団長と一緒に執務室に入り、所々紙が散らばっている床の上を紙を避けながら歩き、机の前に行く。
ていうか机の上汚っ!!
「さて、本題なんだが······まあその、なんだ。恐らく、お前が申告した出身地に誤りがあると思うんだが。」
「?いえ、特に間違ってないと思います。あ、綴り間違ってました?」
「いや、綴りはあってる。だが、俺の記憶違いでなければそこは国の北にある、特に名産品もない寂れた村だった筈だが。」
そうですけど⁉
本当の事だけど、酷いこと言うなこの人。言い方ってものがあるだろ。
もし俺がほんとにその村の出身だったらバカにされたって激怒するとこだ。
········まあ、違うんだけどね。なんでわかったんだろ。
団長が気まずそうに言う。
「·······今なら書き間違いで済むぞ?」
その言葉の裏には、頼むから察してくれ。ほんと、面倒事になるから。というような声が聞こえてくるようだった。
だが俺はそれをあえて無視する!!
そもそも何を察しろっていうんだって話だからな。
「ええー、間違えてませんよ?」
そう言った途端、勢いよく執務室のドアが開けられて筋肉隆々の騎士が数人と隊長が入ってきた。
ああ、なんか部屋の前をうろうろしてる人がいると思ってたけど、入る機会を窺ってたのか。
呑気に考えているとすぐにドアが閉められて鍵もかけられた。
いやどういう状況よ?
俺が混乱している事に気づいたのか、隊長がやれやれと首を横に振った。
いきなり何なんですか隊長。
俺はいつになったら隊長のそばに戻れるんですか。
そしていい加減喋ってください隊長。
そう思いながら、俺は大人しくむさい騎士達に囲まれた。
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