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「え、た、隊長⁉マジですか⁉俺です!カイです!」
「カイ······?カイは一年前、行ってきますと謎の言葉を残して騎士団を去った。」
謎の言葉⁉そんな風に思われてたの⁉
あの時隊長、ああ、って返事してくれたじゃん!
意味わからずに返事してたんですか⁉
「·······それにカイは、フードを被っていたからよくわからないが、赤毛で癖毛だった。何よりこんなに騒がしくなかった。」
「酷いです!天パなの気にしてたのに、そこで判別するなんて!今は天パ抑えてるんですよ!色だって!口調もがんばって明るい感じにしたのに!」
隊長が俺をカイではないと言ったせいで、余計に場が混乱した。
そこへまた別の声がかかってきた。
今度は優しそうな男の声。
「何してるのそんなとこで。早く談話室に行くよ。明日からの任務を簡単に説明するって、団長が言ってたじゃない。」
そう言ったのは、確か副団長、だったか?
俺隊長以外興味ないからうろ覚えだけど。
この国の騎士団は六つくらいに分けられていて、そのそれぞれのトップが隊長、騎士団全体をまとめてるのが団長で、その補佐が副団長、だったはずだから、一応は隊長よりも偉い人。
············だった気がする。
俺は騎士達が副団長を見た瞬間にサッと腕の中から逃れ、一番に副団長の側に行った。
「お久しぶりです副団長!さ、早く談話室とやらに行きましょう!」
そういうと副団長は何故か俺を驚いたように凝視してきた。
ま、まさか副団長まで俺を追い出そうとするんじゃ······?
そう思って顔を青ざめさせたが、副団長は相変わらず穏やかな雰囲気を纏ったままだった。
「·········ひょっとしてカイ君、かな?ほんとに久しぶりだね。随分様子が変わったみたいだけど·······」
そう、少し戸惑ったように言った副団長の言葉に応えたのは俺ではなく、副団長の後ろにすっぽりと隠れて気配を消していた小柄な獣人の女性だった。
突然のその人の登場に騎士達はぎょっとする。
まあ俺はわかってたけどね、ふふん。
その人はじっとりとした目で俺を見てくる。
「変わったなんてレベルじゃないと思いますけどね。現に他の奴等は気づかなかったみたいですし。むしろ何故副団長がわかったのかが疑問なくらいです。」
ひどくない?俺そんなに変わってる?
ショックが大きいが、副団長のおかげで騎士達もしぶしぶ俺を取り押さようとはしなくなったから、まあいいか。
隊長は眉を潜めたままだけど。
こうして、俺は取り敢えず帰ってくることができた。
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