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勿論それに騙されるほど俺達は阿呆じゃない。もう一歩、踏み出した時又姫は口を開いた。
「私は何度でも言いますが貴方達を消す為に帝に送り出された存在です。…私は正直、無駄な殺生は好みません。例え、人ではない者としても」
まだ信じられなかったが、それを証明するように姫に駆け寄って攻撃を仕掛けようとした部下が1人、姫の周りで消滅した。
存在自体が消えたのだ。
ここまで見せつけられたら信じるしかない。
姫は敵のはずだった俺達を助けた。
取り敢えず近寄れないし放っておく訳には行かないから一定の距離を保って俺達の暮らす集落に行ってもらうことにした。
…え?放っておけば良かったのにって?それは後で零から聞いてくれ。…なぜそんなに零に過剰に反応するんだ。
話を戻すぞ。
集落に着いたら、まず部下を帰らせて俺と姫、距離を保ちながら見つめあった。
恋心から成す甘い見つめ合いではなく、お互いの腹の探り合いだ。
「なぜ俺達に忠告した。もし帝が確かにお前が俺達を殺すために来たのだとしたら、不敬罪と捉えられても過言ではないのだぞ」
「…生きているものを救うのに、理由なんぞ要りますでしょうか。そして、帝とて人間。私らとは変わりない」
変わった娘だったよ。恐れることなく俺の眼を見れたり、その頃の姫としては有り得ない考えを持っていたり。その頃帝は神だと考えられていたからな。
だが、俺はその気高く美しい姿に絶対抱いてはならないはずの恋心を感じてしまった。
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