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夢
「きっと千夜ちゃんは夢姫なのね」
懐かしい声。上を見上げると、柔らかく微笑む祖母の顔があった。
「ゆめき?」
心無しか、自分の声も幼い。
ああ……きっと、これは夢か。
「そうよ。おばあちゃんもね、夢姫だったのよ」
「おばあちゃんも?」
外で、今はあまり東京では聞かなくなった日暮の声がする。きっとこれは、小学校5年生の夏の日だ。
「夢姫ってね、ありとあらゆる声を聴ける人なのよ」
「ありとあらゆる声……?」
「千夜ちゃんは、色んなものが見えるでしょう」
「人ならざるものを見えること…?」
「そう。それはね、恥じるべきじゃないの。なんでおばあちゃんが人ならざるものって言っているかわかる?」
この時の私も、今の私も、この祖母の疑問には答えれなかった。
「ううん…わかんない」
「そっか。うーん、分からないかもしれないけど、物語として聞いてくれる?」
「うん」
「それは、1000年以上前のお話……
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