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私が住んでいるおんぼろアパートの目の前に来て、左側にある階段を上る。ふんわりと私の部屋の前に霞がかかっていた。
はぁ。またか。
すっと私は手を突き出す。手の甲が淡く光り始めた。
「祓え」
そっとつぶやく。それだけ。それだけで、手の甲に線が走り、五芒星を作る。
見る見る間に魔法陣が刻まれる。
霞に手をかざせば、魔法陣は一際輝き、光を纏った。
一瞬。霞が吹き飛ばされる。
「はい、終わり。」
手の甲はいつも通り何もない。
私は人ならざるものが見える。
そしてそれを祓える。
どうやら父が神職関係の仕事をしていたらしく、母曰く父も見える人で払える人だったらしい。
まあ、その二人ももうこの世にはいないのだが。
ドアノブを回して、私の部屋に入る。
畳八畳にキッチンやお風呂のみ置かれた簡素な部屋。
女子力など気にはしていないし興味がない。
押し入れから布団を出しておく。
さて、夜ご飯は何にしよう。といってもスーパーで昨日セールして安くなっていたコロッケしかないんだけれどな。あ、あと自家製もやしがあったか。余り物のレタスも乗っけよう。
ご飯もたけているし、今日はコロッケご飯にしよっと。
しかし、そんな願いは虚しく。
頭上で大きな物音がし――
慌てて上を見たときに分かったのは、
濡羽色の髪に金の瞳をした――
天狗だった。
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