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目を覚ますと野原にいた。
辺りは夜で、何もない。星でさえ輝かず、静かに隠れている。
ここはどこだ?
家の中ではないし見覚えのない場所だ。
「あ、起きた?」
隣から声がする。
何処か聞き覚えのあるような声。
隣には生意気そうな顔した金髪碧眼の少年がいた。
いや、女の子か?しかし、男の子にも見えない気もしない。
中性的な子だ。
「…君は」
「僕?僕はリシス」
「リシス…誰?」
見た感じも名前も合わせて外国人だろうか。
「ねえチヤ、君は今幸せ?」
「しあわ…せ…」
問われたことの意味が解らなかった。
或いは,今までのことが頭の中で回って私自身が質問を拒否しているのかもしれない。
幸せかどうか。理解するのには相当な頭の能力を使った。
というか、それよりなぜリシスは私の名前を知っていたのだろう。
ああ、夢か。きっと、私は夢を見ているのだろう。
「幸せ、だと思うわ」
「ふぅん」
リシスは自分が問いかけたくせに、何処かつまらなそうな顔をして私を見つめた。
「嘘だ」
ゆっくり、しかし確かに、それは私の聴覚に届いた。
リシスは、口角を上げて私に言い放ったのだ。「嘘だ」、と。
「どうして」
「僕は君のことは何でもわかる。君がトモダチに罪悪感を感じていること、いなくなった両親に隠していること、過去の過ちも、ヒトナラザル者を祓えることもぜーんぶ」
「な…何で知って!」
嫌。自分の黒い部分が、汚い部分が、曝け出された気がして。
「ふふ、図星?ネェ、僕はね、君をしあわせにすることが使命だから。だから、送ってあげる」
「え…」
どういうことだ。夢だ。これは夢のはずだ。
違う。夢じゃない。リシスは誰だ?
今どうなっている。
送る?どこに?
「どこに送るの…」
考えが漏れ、言葉として発せられる。
「どこって…」
元々笑っていたリシスの顔が、もっと満面の笑みに広がっていく。
「誰そ彼の国へようこそ」
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